カテゴリ:コラム( 51 )

 

川は流れる

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早朝6時30分。まだ日の射さない川岸で、黙々と草むしりをしています。一人、一人と岸に下りて來るたび「おはよう」「ご苦労さん」「遅れてごめんよ」の声が響きます。

栃木市の旧市街を南北に流れる巴波川(うづまがわ)の清掃。ひと夏3回、市の恒例行事で、もう24年のつき合いです。一応、朝7時集合となっていますが、元気なお年寄りは30分も前から鎌を手におしゃべりを始めます。ここに越してきた頃は、その気配で目が覚めました。川の流れと鳥のさえずりが、寝床から聞こえてくるんです。

この川掃除を、いやだなと思ったことはありません。草むしりは得意ですし、大抵は見慣れた顔で、冗談ばかり。
「ゆたかちゃん、将棋指しに来なよ。弱いのばっかしじゃつまんねえよ」と、50ン年前のガキ大将。
草をむしっているときは無心です。汗をかけば爽やかで、朝飯もうまい。

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メグスリノキの葉陰からの巴波川です。お掃除されて、さっぱりしました。
この木は亡き父が10年前に植えたものです。よく見ると、たわわに種を付けています。
ゴッホの絵みたいに種蒔けば、次代に向かって芽吹くかなぁ。(ゆ)

by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2017-09-30 16:41 | コラム | Comments(0)  

魔女の一撃

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それは突然に来た。
注文のあった苗木2本をポットに採り、軽トラに乗せようとかがんだときだった。チクリ、と右の腰に来た。いつものことだと思ったが、痛みは俄に激しくなり、歩けなくなった。

今まで経験したことのない痛みだった。ぎっくり腰。「魔女の一撃」と言うらしい。
「3日は安静。硬い布団で横向きに寝てなさい」と医者に言われ、その後、ブロック注射を2度受けた。あれから3週間になるのに、まだよろよろ歩き。15分も歩くと尻や脛がしびれ、立っていられなくなる。

なんと情けないことだろう。この暑さで草はぼうぼう。草刈り機を回すどころか、草の生えている畑まで歩いて行くのさえおぼつかない。炎天下、独りつーちゃんが刈っているのに、何の手助けも出来ない。

痛みが引くまで、じっとしているしかないのが辛い。藤沢周平の文庫本はもう6冊目だ。相撲もよく観た。横綱白鵬の蹲踞の姿のなんと美しいことか。

普通に歩けること。普通に草刈りが出来ること。いつも通りに仕事をし、よく食べよく飲み、疲れれば深く眠り、気持ちよく朝を迎える。ただそれだけのことがなんと有り難く大切なことか。腰をやられて初めて分かりました。今回の、それが唯一の収穫。

魔女よ、もう許しておくれ。(ゆ)

 by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2017-07-23 10:26 | コラム | Comments(0)  

優しきゴッホ

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優しそうなゴッホです。
久しぶりに上野の東京都美術館に行きました。「ゴッホとゴーギャン展」。ピサロ、モネ、ロートレックもありましたが、一番気に入ったのがこれでした。

明るい色彩、軽やかな筆致。ちょっと見開いたような目線に親しみを感じて、思わず見入ってしまったのです。40点近くあるといわれる自画像の中で、おそらく最も気分よく、安定した精神状態で描かれたものと思います。ゴッホ34歳。耳切り事件のあとピストル自殺する3年前でした。

これを描いたあとゴーギャンとの共同生活に入り、そして分かれ、精神に異常をきたしながら次々と代表作を描き続けました。それにしてもなんと濃密な数年間。晩年に近づくにしたがって絵はますます色彩鮮やかに、クリアになっていくように感じます。

この「パイプと麦わら帽子の自画像」は、嵐の前の静けさなのかもしれません。もう一度、ゆっくり観てみたいな。 (ゆ)

 by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2016-10-31 13:15 | コラム | Comments(1)  

金魚湯おきん

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自宅から歩いて2-3分のところに、古い銭湯がある。金魚湯という。確か小学生の頃入った記憶があるので、半世紀を超えてなお続いている。今では懐かしい昭和の佇まい。それでも昼間から、風呂好きの常連が一人二人と暖簾をくぐって行く。

くそ暑い休日の昼下がり、久しぶりに金魚湯に行った。低い番台と木造りの脱衣場、大きな着替え篭。大鏡の向こうから聞こえてくるのはおばさんたちのデカい声。背に観音様を入れた兄さんもいて、そんな昔と変わらぬ風情になんだか嬉しくなった。

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湯は熱い。熱い湯に、うーっと唸りながら浸かる。ふと見ると、湯舟のわきには河童の若い女の石像。一目、胸の盛り上がりで若いと分かる。見上げていると、目の前の河童がこんなことを言った、とそんな気がした。

「風呂はつま先からへえるもんでござんす。波立てちゃあ、周りに迷惑がかかります。やせ我慢してぢっとへえって、来し方行く末を考える。それが熱い湯に浸かる作法でござんす」

なあるほど、これから河童姉御を「金魚湯おきん」と呼ばせてもらおう。
大汗をかき、さっぱりして通りに出る。おきん、また来るぜ。 (ゆ)

 by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2016-08-29 16:13 | コラム | Comments(0)  

痛い教訓

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やってしまった。一昨日の夕方だった。
ここの伐採がもうすぐ終わる、そんな矢先のことだった。
枝を払っていたナタで、親指の先を落としちまった。

その瞬間は、何が何だか分からなかった。軍手の切り口から、つめの先が飛んだあとの指が見えて....指先だけがやけに冷たかった。

つーちゃんがそばにいたので助かった。指の根元を縛ってもらい、タオルをかぶせ押さえたまま軽トラで病院に直行....

「縫うと短くなっちゃうからね。このまま包んでおきましょう。なあに、ひと月もすればくっついてくるよ。まあ見事に切ったもんだ」
その晩、麻酔が切れたあとの痛みと言ったら....

痛みと後悔の日々が過ぎて、少し落ち着いた。
怪我は、我れが怪(あやし)いと書く。そんな瞬間だったのか。ナタを使うときは用心していたのに。
魔が差したのか、ナタは重く、疲れてもいた。が、自分で自分の指を落としてしまったことに変わりはない。

一つ、仕事は終わり際が危ない
一つ、山仕事は一人でやるな
一つ、疲れたら休め
そんな当たり前のことを改めて思い知らされた、まったくお粗末な出来事でした。

    女房に洗髪されて気恥ずかし
    後悔も流してしまえシャンプーよ  (ゆ)

by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2016-03-27 16:28 | コラム | Comments(0)  

子規忌

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久しぶりの快晴に今年も曼殊沙華が見事です。
今日が正岡子規の命日であることを、今朝図書館で知りました。

享年36歳。生涯2万4000の俳句を詠んだそうです。最初の喀血が明治21年(21歳)といいますから、その多くが病床から詠まれたのでしょうか。高浜虚子、長塚節、伊藤左千夫….多くの文人が子規の句会から巣立ったといいます。

自作の句をみてもらいたくて、病に伏す子規を漱石が何度も見舞ったそうです。留学先のロンドンからも自作の句を子規に送りました。

  夕月や野川をわたる人はたれ

漱石の恋の句と言われますが、それは子規を詠う句だったりして。
みんなに愛されたんだなぁ。    合掌

by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2015-09-19 22:52 | コラム | Comments(0)  

草刈り

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 草刈りです。今年の夏は35℃を超える高温続きで、雑草の伸びが尋常ではありません。刈ったと思ったらまた生え、少しさぼると膝丈までになって何度がっかりしたことか。かいた汗、飲んだスポーツドリンク、買わなければならなかった草刈り機の刃。それは去年の倍かもしれません。

 伸びた雑草は刈らなければなりません。植えた若木が大きくなれないばかりか、根元を食い荒らすゴマダラカミキリの幼虫を駆除することも出来ないからです。

 真夏の草刈りは結構な重労働です。軍手に長靴、麦わら帽子は必要不可欠。流れる汗は半端じゃなく、ヘビに出くわしブユやハチに刺されることも。それでも草は刈らないと.....

 この作業は不思議なもので、長年草刈り機を回していると、刈り心地みたいなものを身体が覚えてきます。草は伸び過ぎず、出来ればススキのようにほど良い硬さ、刃は研いでおき、曇天で草は昨夜の雨に少し濡れているほうがいい。刃切れよさを感じるときです。

 そんな刈り心地に身体を任せていると、ふと世俗のなんにも考えず、無心になっている自分に気づく時があります。草刈りそのものに集中している、ということかもしれません。

 刈り終えて振り返ると、畑は一変してすがすがしく心地よい疲れ。1円にもならないけれど、これは仕事の成果だと言い聞かせて麦わら帽子を脱ぎました。若木が涼しそうです。 (ゆ)

by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2015-08-31 23:49 | コラム | Comments(0)  

春の花火

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マンサクです。母の自宅の庭に咲きました。幸福の黄色いハンカチ、じゃなくて、ねじれたリボンのようで摩訶不思議。まず咲く、まんず咲く、ということで名がついたそうな。早春に先駆けて咲くことで知られています。

花言葉は「ひらめき」と調べて、納得。ウグイスが春告げ鳥なら、春告げ花はマンサクでしょうか。平和で、ゆとりのある春になるといいなあ、そんな気持ちにさせる花....。青空をバックに撮ると、まるで花火みたい。

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後藤健二さん殺害か、のニュースに何ともいえぬやるせなさが沁みてきます。シリア、イラクにマンサクは自生しないのか。イスラム国の戦闘員に、この花をつくづくと見せてあげよう。その姿をいつくしむ心は、あのような残虐行為とは無縁のはず。

あぁ、暴力に花を投げよう
ナイフには花の香りに包まれた鞘を

  梅が香をまとめてをくれ窓の風 (子規)

by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2015-02-01 15:31 | コラム | Comments(0)  

氷雪と温泉の地

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奥日光・湯の湖です。凍った水面に、先週からの積雪でご覧の通り。いつもはシャーベットの湖面が日差しに映えてまぶしいくらいですが、これは逆光。

奥日光に納品に来ました。日光市湯元。いろは坂を上り、中禅寺湖、戦場ヶ原を超えて走ること15分、車を降りるや硫黄の匂いが鼻をつきます。ここはスキーと温泉の観光スポット。老舗ホテルの売店に、めぐすりの木のお茶や飴、クッキーを納めています。

そんなには売れませんが、そこそこは売れてます。支配人はじめ売店の白髪のおばさんも、みな黒のスーツできちっと対応するのですが、どこかゆるんで面白いのです。このお付き合い、ずうーっと続くといいけどな。

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帰りに、戦場ヶ原の売店に寄りました。今日は最高気温-0.3℃。熱々の天ぷら蕎麦でも喰ってくか。 (ゆ)

 

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by megusurinoki-net | 2015-01-24 17:57 | コラム | Comments(0)  

冬桜

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身内ニ突然ノ不幸アリ 義姉入院7日デ息ヲ引キ取ル 言葉ナシ 兄ノ喪失感イカバカリカ

近クノ公園ニ10月桜(ジュウガツザクラ)咲キ始メル 
冬桜トモ呼バレ 寒風ニ耐ヘテ咲ク健気ノ花
花言葉ハ「精神美」 白ク小サナ花ニ 亡キ姉ノ姿重ナル

  あはれ花びらながれ
  をみなごに花びらながれ
  をみなごしめやかに語らひあゆみ
  うららかの跫音空にながれ
  をりふしに瞳をあげて
  翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり

達治ノ詩ニ 女学生ノ頃ノ姉ヲ思フ  合掌         (ゆ)

 

by フジグリーン・メグ
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by megusurinoki-net | 2014-11-24 22:47 | コラム | Comments(0)