金魚湯おきん
2016年 08月 29日

自宅から歩いて2-3分のところに、古い銭湯がある。金魚湯という。確か小学生の頃入った記憶があるので、半世紀を超えてなお続いている。今では懐かしい昭和の佇まい。それでも昼間から、風呂好きの常連が一人二人と暖簾をくぐって行く。
くそ暑い休日の昼下がり、久しぶりに金魚湯に行った。低い番台と木造りの脱衣場、大きな着替え篭。大鏡の向こうから聞こえてくるのはおばさんたちのデカい声。背に観音様を入れた兄さんもいて、そんな昔と変わらぬ風情になんだか嬉しくなった。

湯は熱い。熱い湯に、うーっと唸りながら浸かる。ふと見ると、湯舟のわきには河童の若い女の石像。一目、胸の盛り上がりで若いと分かる。見上げていると、目の前の河童がこんなことを言った、とそんな気がした。
「風呂はつま先からへえるもんでござんす。波立てちゃあ、周りに迷惑がかかります。やせ我慢してぢっとへえって、来し方行く末を考える。それが熱い湯に浸かる作法でござんす」
なあるほど、これから河童姉御を「金魚湯おきん」と呼ばせてもらおう。
大汗をかき、さっぱりして通りに出る。おきん、また来るぜ。 (ゆ)
by フジグリーン・メグ
スリノキネット
by megusurinoki-net | 2016-08-29 16:13 | コラム