待つ、ということ

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1週間前の雪が解けずに残っている。

「うー、さぶっ」。家で、会社で、そして畑で何度うめいたことか。


工場では連日遅くまで残業。ひどい時は二交代で夜の10時まで仕事しないと(納期に)間に合わない日が続いた。60も半ばを過ぎた社長など、土日の休みもなく深夜まで作業。暇な時と忙しい時を自力ではままならない中小零細企業の宿命か。しかし生き残っていくためには、どんなに苦しくともやらなければならないときがある。鬼のような寒さの日々を、ひたすら耐えるのである。


A型インフルエンザで6日間、出社禁止の憂き目にあった。高熱で妄想にうなされ、ヘルニアの痺れもぶり返した。ようやく熱が下がり、手にした本があった。アイザック・B・シンガーの『ショーシャ』。まだもうろうとした頭でも読み進むたび味の出る、スルメのような本だった。


ショーシャはワルシャワの貧民街クロホマルナ通りに生まれた少女。知恵遅れで発育不良で、かつ美しい。幼なじみの主人公「私」は少年の頃、すでに彼女への永遠の愛を誓っている。


やがてワルシャワを出て物書きになった「私」は20年後、再びクロホマルナ通りに戻ってくる。そこにショーシャがいた。20年前とほとんど変わらない姿で。「ショーシャは成長もしていなければ年をとってもいなかった」。


二人は結婚する。しかし。もう間もなくヒトラーがやってくる。「私」はショーシャがクロホマルナ通りから引き離されたら、水を失った魚のようにたちまち死んでしまうのを知っている。そしてワルシャワに留まるが….


戦争は終わり「私」はニューヨークにいて、またワルシャワに旅立つ。ショーシャはどうなったか。それはとても言えない。ラストで「私」は待ち続ける。何を? ショーシャを? 希望を? 何かが起こると信じているかのように。


アイザック・シンガーは1978年ノーベル文学賞を受賞、イディッシュ語作家という。イディッシュ語とは東欧に流浪したユダヤ人たちの言語で「権力の座にある人々によって決して用いられたことのない世界でただひとつの言語かもしれない」と、シンガーは言っている。(辻原登『熱い読書 冷たい読書』より)


寒波が過ぎるまで、じっと待つことにしよう。いい知らせが降ってくるかもしれないから。(ゆ)

by <a href="http://www.megusurinoki.net/" target="_blank">フジグリーン・メグ
スリノキネット</a>



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# by megusurinoki-net | 2018-01-30 21:20 | メグスリノキ | Comments(0)  

忘れられしもの

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なんとまあ、残酷な....。モズの早贄(はやにえ)というやつか。
獲物はカエルだった。干涸らびているところをみると少なくとも数週間たっている。稲刈りが終わった田んぼにいて捕まっちまったのか。

なにもメグスリの芽に突き刺すことはないだろう。これじゃあ春になって芽吹くこともままならねえ。このままにしておくのもいい気持ちがしないので、畑に埋めてやった。合掌。

それにしても、どうしてこんなことをするんだろう。餌の備蓄、本能、縄張り表明など諸説あるけれど、本当のところは分からないという。

こんなのに出くわすと、獲物をこれ見よがしに突き刺しておくやつの印象は誠に良くない。時としてシジュウカラなど、同じ野鳥さえ犠牲になるという。どうせなら夏に来て、メグスリの天敵ゴマダラカミキリを早贄えにしてほしい。そしたら仲間に入れてやるんだが。

けさの朝刊で、葉室麟が亡くなったのに驚く。『いのちなりけり』に目薬の木が出て来るので近しく読んだ。『蜩の記』には泣かされました。合掌。 (ゆ)


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# by megusurinoki-net | 2017-12-25 00:41 | コラム | Comments(0)  

紅葉の終わり

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わずかに残る紅葉です。こんなのも風情があっていいのかも。
すっかり葉が落ちると、一年の納め。木々は眠りに入ります。ひっそり静寂に包まれるこれからのひと月が気に入って、ここに来るのが好きになりました。年をとったせいかなあ。

風のない小春日和の朝など、空気も澄んでいい気持ちです。シジュウカラやヤマガラのさえずりが聞こえると、つい立ち止まって見上げます。落ち葉を踏む音さえ邪魔になりそうで。

野鳥は小さいのがいいなあ。ヒガラやゴジュウカラもいそうだけれど、小生には識別出来ません。ツツピー ツツピー!を聞いていると心が洗われるようだし、敏捷極まる動きは木々の小枝によく似合う。

さあてデジカメも新調したことだし、冬の休日はあのさえずりを聞きながら、見事撮れるよう何回も通いますか。(ゆ)



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# by megusurinoki-net | 2017-11-28 22:51 | メグスリノキ | Comments(0)  

雨中の植栽

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トンネルを抜けると、みぞれだった.....。
昨夜、本州を通過した台風22号は爆弾低気圧となって冬型の強風と雨をもたらした。

ここは新潟県南魚沼郡湯沢町三国にある本陣富沢家近くの畑地。気温6℃。降りしきる雨は冷たく、スコップを握る指がかじかむようだ。

親父にメグスリノキの紅葉を見せてやりたい、とのご注文で3mほどの苗木5本を栃木から載せてきた。積雪はゆうに2mは超えます、とのことで青竹3本を支柱に杭できっちり固定した。

虫の知らせというべきか、今回はシゲちゃんにも応援を頼んだ。つーちゃんの相棒で力持ち。案の定、ユンボが入っていけない狭い下り坂を、根巻きして3-40㎏はある苗木を独り涼しい顔で運んだ。

肥やしをたっぷりあげたので、根付けば2-3年で樹勢はぐんと増すでしょう。ここは標高も高く寒暖の差がありそうなので、鮮やかな紅葉が観られると思います。なのでご主人、いましばらくお待ちを! (ゆ)
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# by megusurinoki-net | 2017-10-30 23:15 | メグスリノキ | Comments(0)  

川は流れる

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早朝6時30分。まだ日の射さない川岸で、黙々と草むしりをしています。一人、一人と岸に下りて來るたび「おはよう」「ご苦労さん」「遅れてごめんよ」の声が響きます。

栃木市の旧市街を南北に流れる巴波川(うづまがわ)の清掃。ひと夏3回、市の恒例行事で、もう24年のつき合いです。一応、朝7時集合となっていますが、元気なお年寄りは30分も前から鎌を手におしゃべりを始めます。ここに越してきた頃は、その気配で目が覚めました。川の流れと鳥のさえずりが、寝床から聞こえてくるんです。

この川掃除を、いやだなと思ったことはありません。草むしりは得意ですし、大抵は見慣れた顔で、冗談ばかり。
「ゆたかちゃん、将棋指しに来なよ。弱いのばっかしじゃつまんねえよ」と、50ン年前のガキ大将。
草をむしっているときは無心です。汗をかけば爽やかで、朝飯もうまい。

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メグスリノキの葉陰からの巴波川です。お掃除されて、さっぱりしました。
この木は亡き父が10年前に植えたものです。よく見ると、たわわに種を付けています。
ゴッホの絵みたいに種蒔けば、次代に向かって芽吹くかなぁ。(ゆ)

by フジグリーン・メグ
スリノキネット

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# by megusurinoki-net | 2017-09-30 16:41 | コラム | Comments(0)